新公益法人制度 ズバリ詳細解説11 −新しい法律の内容から−
2006年9月1日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
CEO兼主席研究員 福島 達也

 新公益法人制度の成否は「公益性認定」がカギ!
 新制度で改革が進みかどうかは、公益性認定しだい。
 裁量の余地の少ない明確な認定と情報開示の強化が必要!

改革後、天下りや官製談合はなくなるのか?

 記憶に新しい事件として、逮捕者までもが出た「防衛施設庁をめぐる談合事件」がありますが、これも公益法人が舞台となっていました。もともと官製談合を防止するため、同庁の幹部職員は退職後の2年間、受注企業への天下りを禁じられていました。しかし、その2年間に同庁の幹部はいったん公益法人に天下りし、その後、民間に再就職していたのです。まるで公益法人が官製談合の「待機場所」となっていたわけです。いわば天下りの迂回工作です。

 では、この新しい法律とともに天下りや官製談合はなくなるのでしょうか。許認可や補助金の道が絶たれると、確かに天下りはなくなるという考え方が一般的です。しかし、優秀な官僚にとっても、定年前後の再就職先は必要でしょうから、新しい法律で完全にゼロになるとは思えません。

 他方、年金の官民格差を是正するため、公務員から民間企業や独立行政法人(独法)などへ天下りしている間の年金の優遇措置を廃止する方針が決定し、国会で成立する運びとなっています。このように公益法人制度以外にも天下りを作る背景はまだまだありそうですが、いままでの「公益性」が官公庁の自由な裁量に任されていたことを思うと、天下りや補助金交付の温床には一定の歯止めがかかりそうです。

 ただし、公益認定を行う「公益認定等委員会」を担当する行政庁の影響力を完全に排除しない限り、完全にゼロになるとは言えないでしょう。さらに、影響力を完全に排除するためには、国民の厳しい監視が必要です。そのためには情報開示の強化が必要不可欠なのです。

 国会では公益法人制度改革関連法案の採決の際、衆議院でも参議院でも附帯決議が採択されました。附帯決議では、行政改革を進める上で、「民間が担う公益」の重要性がますます増大すること、そしてその担い手である非営利法人の役割が今後の我が国の社会を活力あるものとするには不可欠であることを強調しています。

 そして、新しい公益法人制度改革関連三法の施行に当たって、この法律の立法趣旨や各条項の解釈について、公益法人等の関係者を中心に十分周知徹底することを明言していますが、この法律を評価しない専門家が多い中で、どこまで理解を得られるのか、円滑にスタートできるかに注目が集まりそうです。

 また、今後一番の争点になりそうな、公益性の認定を行う「公益認定等委員会」の運営については、委員会の中立性・独立性に配慮するとともに、専門的知見に基づく判断を可能とするよう、その構成等に万全を期することを強調していますが、一体誰がどうやってメンバーを選定するのか、その選定手法などによっては、形骸化しかねないと予想されます。

 さらに、委員会を担当する事務局が、結局天下りの温床だったり、公益認定に影響力を持ったりするのではないかという懸念があるのも事実です。そこで、担当事務局は委員会が行う認定審査や監督に遺漏がないように適切に補佐するだけでなく、主務官庁による許可主義を廃止した今回の改正の趣旨を十分に理解して、公益性の認定に際しては、担当事務局の影響力を排除するよう留意すべきと明言していますが、黒子に徹することができるのか、影響力を完全に排除できるのか、このあたりは国民の厳しい目で注視する必要がありそうです。

 そのほか、現行の社団・財団法人が新制度下に移行するに際、これまでの活動実績を積極的に評価するなどの配慮を行うこととし、この法律制定と同時に定める政令や府省令の制定に際しては、公益法人などの関係者や国民からの十分な意見聴取を踏まえて、立法趣旨に適合するよう、適切に定めることとしています。


非営利法人総合研究所

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